最初の何年間か、ニコルという家庭教師に来てもらっていた。
白髪まじりのボブが似合う、鼻の高いスイス人の女性だった。
とてもおだやかで優しい人だった。
私は友達だと思っていた。
私が学校でみんなにバカにされていることを伝えたら憤慨し 、
「次に何か言われたら、言い返せる言葉を教えてあげましょう」 と言われた。
「バカ」とか「アホ」では、 彼らのレベルに合わせてしまうことになるから、
彼らがギャフンと言うようなことを言い返すのよ。
ということで、
「あなたの頭の中には光が無いのね」とか
「まさかあなたたちが言っていることが理解できないと思ってる?」とか
長い文章を教えてくれて、私はそれを必死で覚えた。
それを使う日は、すぐに訪れた。
いつものように囲まれて、からかわれる。
そこで私は秘密兵器を口にした。
"T'as pas d'lumiere dans la tete!" (あんたの頭の中には光がない!)
みんなが目を丸くして仰天する姿を、今でも覚えている。
その瞬間から、私はみんなに認められ、クラスの人気者になった。
子供はその辺素直だから、 からかわれ問題はそれであっという間に解決。
それからは友達もできて、フランス語も半年くらいでできるようになり、
楽しい小学校生活を送った。
でも、小3で日本人学校に転校することになる。