For No One

パリ、東京、ニューヨークでの思い出話や日々思うことをつらつらと書いていきます。

出産

今、私の前には生後3ヶ月の男の子が穏やかな寝息を立てている。

書きたいことが溜まりすぎていて収拾がつかなさそうだけど、とりあえず出産まで遡ろうと思う。

 

2017年7月2日、計画無痛分娩のため荻窪の病院へ夫と向かった。そこで一晩入院して、翌日出産するためだ。

その日は両親と4人で焼肉ランチを食べて、この大きなお腹と翌日おさらばという実感がいまいち湧かないまま入院した。

諸々検査を受けて、点滴とミニメトロ(子宮を開くための風船)を入れられ、その日はさっさと寝た。あまりピンと来ていなくて、思っていたほどの興奮状態にはならなかった。

翌日は朝の5時からまた色々検査を受けて、無痛分娩の準備をしていた。夫も9時くらいに着いて、お互いの親はお昼くらいに病院で待機する予定だった。無痛分娩だと大体夕方に生まれるけど、稀にお昼過ぎにするっと生まれることもありますよーと言われたので。

ときどき看護師や医師がお腹につけているモニターをチェックしに来て、赤ちゃんの心音が少し弱いので、様子を見てこのまま弱いようだったら帝王切開になるかも、と言われたけど、あまり切羽詰まった言い方じゃなかったので聞き流していた。担当のお医者さんも来て、子宮口がやわらかくなってるから促進剤入れますね〜と、あたかも順調に進んでいるような口調だったからなおさらだ。

ところがどっこい、10時に赤ちゃんの心音がマジで弱くなったので、別の医師が「緊急帝王切開!」と叫んで、あれよあれよという間にストレッチャーに乗せられ、両腕にブスリと点滴を打たれ、「聞こえた?このままじゃ赤ちゃん危ないから帝王切開するからね、すぐに終わるから」と言われて手術室へ移された。医師と看護師総勢10名くらい居て、ドラマと同じだ〜と、変に冷静に思った。

夫は、後から確認したら怖い内容(「何が起きても文句言いません」的な)の誓約書にサインをさせられ、私に「とりあえず親に連絡しといてね!」と叫ばれ、一番怖かったのは彼だろう。

何が一番シュールだったって、全身麻酔をかけられる寸前に牧師さんが来て、「ここはキリスト教の病院なので、今からお祈りをします。」と耳元でお祈りを唱えられたことだ。神のご加護が必要なほど危ない状態なのか!と、怖くなりかけたときにはもう意識が無かった。

 

目を覚ましたら、病室に移っていて、夫が座っていた。

赤ちゃんの産声を聞けなくて、生まれたばかりのぐちゃぐちゃの赤ちゃんを胸に置くことができなかったのが悲しくて、涙がポロポロ出た。夫も泣いていた。

「赤ちゃんは無事?」と聞くと、「うん、もうみんな抱っこしたよ」と。

 

んあ?

 

そう、私よりも先に夫とお互いの両親が息子を抱っこしていたのだ。

てか私まだ見てもいないし!!!

 

くう、今思い出しても悔しいぜ。

 

結局その日は私の体がボロボロだったので、赤ちゃんに会えたのは翌日だった。

 

続く。