For No One

パリ、東京、ニューヨークでの思い出話や日々思うことをつらつらと書いていきます。

ラリーに誘われて~その1

熱は2日で下がりました。自宅で検査したところコロナでもなかった。

一体何だったんだろう。休肝日作れ!って言われてたのかな。

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私が通っていた大学はパリ第十大学といって、ナンテールというパリ郊外の町にある。

先日少年が警察に打たれて亡くなって大騒動を巻き起こした事件の現場だ。

大学は電車の駅から徒歩10歩とかで、時間が空いたときにクラスメートと近所のカフェへ行く以外は出歩かなかったのでナンテールのことは全く知らないが、治安があまり良くないことだけは知っている。

 

さておいていいのかわからないがそれはさておき、大学に入ってすぐ、同じ中学の子と再会した。

シャルロットという、落ち着いた感じの子だった。

中学はブルジョワだったので、シャルロットも名前からして由緒正しい家系のお嬢様だった。

不特定多数が通う、治安の悪い町にある大学で会うと、お育ちの良さというか浮世離れっぷりというか、そういうものがよくわかる。

 

お久しぶりねーみたいな感じで会うたびに話すようになり、そのうち「ラリー」というものに誘われた。

これは、中学のときから母も私も噂に聞いていた。

 

なんでも「ラリー」というものは、伝統的には貴族の子どもたちが結婚相手を見つけるために、親が仕切って開催する由緒正しい合同お見合いパーティーらしい。

昔は貴族の子どもたちは家庭教師などが勉強を教えていて、下々の者とは接点が無いまま貴族同士で結婚して子孫を増やしていたのだが、民間の学校へ通うようになったらどの馬の骨ともわからない子と付き合って結婚するリスクが発生した。そうはさせませんことよ!おほほほほ!と、貴族の親たちはネットワークとコネと金を駆使して、自分たちの子どもに最良のパートナーを縄張り内で見つけさせようと企んで始まったシステムということだ(※主観を大分含んでいるので正式な説明ではありません)。

 

社交界、と言えばイメージしやすいかもしれない。

子どもが10歳くらいのときから、成人してしばらくするまで続くらしい。

 

シャルロットに誘われてすぐに母に報告し、なぜ下々の者の代表者である私が招待されたのか2人で頭を抱え込んだ。

部外者枠があるのか?下々枠?なに?見世物?

 

なんにせよパートナーを連れてこいということだったので(下々の私が間違って貴族の息子の目に留まったら一大事だからだろう)、とりあえず彼氏も居ないので高校時代の下々の友だちを誘ったら、彼もめちゃくちゃビビっていた。

 

でも、こんなチャンス滅多にないから行ってみようじゃないか。母もどんなものか知りたくてウズウズしているし。

 

まず、服が無い。

ラリー用の服なんて、下々の者は持っていない。

かといって、ドレスなんて買ったところでもう一生着ないのも目に見えている。

おしゃれさんの母が考えた苦肉の策は、パンツスーツだった。

しかも、黒のベロア。

まぁこれもあまり今後着る機会無いと思うけど、母も私もフェミニン系が苦手なので即決だった。

誘った下々の友だちも、なんとかかんとかネクタイとスーツを見繕っていた。

 

さあ、下々の我々、いざラリーへ行かん!

 

長くなったので続きます。