ちょっと重い話が続いたので、久しぶりにフランスの思い出話を。
フランスでは、挨拶のときにキスをする。
キスと言っても唇をつけるわけではなく、ほっぺとほっぺを合わせながら口で「チュッ」と音を出す感じ。
パリでは通常2回、左右行っていた。
Bise(複数形はBises)=ビーズ、あるいは
Bisou(複数形はBisous)=ビズ という。
仲が良い人に手紙やメールを書くときに、文末に書いたりもする。
どのくらいの範囲の人とBisesをするのかというと、
友だちはもちろん、友だちの友だち。
友だちの親族。
親族の友だち。
とにかく少しでも接点があれば(例えばそれが「同じパーティー会場に居る」というだけでも)、挨拶のときに頬と頬を触れ合う。
冬は静電気でバチッとくるので、要注意だ。
夏は夏でお互い「ベタベタしててごめんね」と言い合いながらチュッチュとする。
会ったときと、別れるときにする。
地域によっては3回とか4回のところがあるので、2回で済ませようとすると
「うちでは3回だから」と言ってもう1回させられたりする。
こんなとき、意見が通るのはいつも回数が多い地域の人なのはなぜだろう。
多感な中学生や高校生のときは、同じクラスに好きな子がいる場合毎日すごい接近できることになる。ドキドキだ。
たまに左右どちらから始めるかタイミングが合わなくて「おっおっ」となることもある。
私はこの習慣がどちらかというと好きだ。
友だちのすべすべのほっぺと香水の匂い。
おばあちゃんのしわしわでやわらかいほっぺとおしろいの匂い。
おじちゃんのヒゲがチクチクするほっぺとタバコの匂い。
こどものツルツルでぷにぷにのほっぺと甘い匂い。
相手の頬の感触や香りや温度を自分の頬で知るというのは、何の役に立つか知らないけどなんだか心が豊かになるような気がする。
話しやすくなるような気がする。
NYではキスではなくハグだったけど、挨拶のときに何かしらボディコンタクトがあるほうが健全な気がするのです。
日本は逆にちょっとでも触れるとセクハラだの下心だのという話になるし、「私、海外生活長いんで抱きつきま~す!」みたいな雰囲気を出さなきゃいけないのがちょっと面倒だし、そういうことじゃないんだよね~…。
文化の違い。その一言に尽きる。
ちなみに親子では、普通に唇を頬につけてキスをする。
朝起きたとき。学校へ行くとき。寝るとき。
パリ日本人学校に通っていたとき、父が毎朝車で送ってくれていて、
私はいつも父のほっぺにチュッとして車から降りていた。
それを他の子たちに見られていたらしく、私は全く気にならなかったんだけど父のほうから「ちょっと恥ずかしいからやめよう」と言われたことがある。
なんじゃい。それでもフランス永住を決めた男か!
そんな親とは、この歳になっても会うとキスをする。
息子はいつまでさせてくれるかなー。